と、タイトルは仰々しいんですが、つまり、住宅建築設計・技術・思想の他にもっと本質的なスウェーデン人特有の文化や価値観、DNA的なものが深く深く一人一人に根付いていて、それらを解明することで謎を解こうというものでこんな高尚な事、私が出来るはずも無く!
そこで、今回はご存知HICPM理事長の戸谷英世先生オススメの藤井威氏の「スウェーデン・スペシャル」(本文中「緑」)を教科書として色んな角度から考えていこうと思います。
ご存知この国の高い高い税金は世界一です。著書資料によると、「99年時点で国民負担率(対国民所得費)は75.4%!!、以下高い順に、フランス(66.1%)ドイツ(56.7%)、イギリス(50.0%)、アメリカ(35.9%)で、日本はと言いますと2002年時点で38.3%」と、スウェーデンはその倍の数字ということになりますね。スウェーデンの場合、所得の4分の3が税金ということになります。
これは勿論、「ゆりかごから墓場まで」でお馴染みの高福祉政策の賜物だということも周知の通りですね。日本人の発想だと「ゲゲ、ほとんど税金かぃぃぃ!」となるんでしょうが、その分、小・中・高・大学の授業料無し、生命保険不必要、貯金の心配なし、65歳以上の年金完備から治療費タダ!電車・バス公共交通費タダ!えとせとら。数えればキリが無いほどの特典があるので一般的日本人感覚とは少し違う見方が必要です。
・・・にしても消費税は25%だし、やはり重税?と思わざるを得ないのは事実です。が、その重税を否定せずに受け止め、国家として正常に機能しているという現実に、この国の人たちの大人度が伺えます。
じゃ、どうしてそんなに大人なの?ということです!ここが今回の最たるポイントなんです。ここで日本の政治家の悪口はひとまず置いといて、少し大人になって、客観的考察をします。
「スウェーデンの人々は、生まれ育ったふるさとのもつ地域的な特性やその中で過ごした生活環境に対する愛着の念が非常に強いという伝統がある。
(中略)この感情は都市住民になっても変わらず、自分の生活する地域一帯の特徴的な環境を大事にし、生活環境の向上改善が生活の質向上に直結するという意識を強く持っている。緑豊かな散歩道があり、白鳥が優雅に泳ぐ入り江のある地域に住めば、これを何とか維持しできれば美化して子供達の世代に引き継いでいきたいと願い、それほど良好な環境に恵まれない人々も、何とか少しでも環境をよくしたいと心から思うのである。」
そんな気質がわかりやすい現実の話に以下のような例に挙げられています。「更に、古い時代の歴史記念物として、この国の各地に多数分布するヴァイキングの遺跡の保存も見事である。見事というのは、柵に囲んで徹底した監視管理が行われているという意味ではない。むしろ、その逆である。自然のままに、いわば発見された形のままにさりげなく保存されているのである。もちろん、見学も立ち入りも、墳墓丘に上ることもそこに咲き乱れる草花を摘むことも自由である。
ただし、一つだけ絶対にしてはあらないことがある。遺跡の破壊である。」
日本の観光名所のほとんどは有料なんですが、著書では若干を除いてほとんど無料と書いてあるんです。で、その入場料もほんの少しで、それで運営するなんて到底出来ないくらいの額なんですね。日本では絶対考えられない感覚ですよね。
この辺のところからも、先祖から受け継いだものを美化して次世代へ引き継ぐ思想がしっかり反映していてまた、そのことを誇りに思うから入場料なんてケチくさいことは当然いわないし、遺跡の毀損なんかももちろんしない。其の一でも書いた、スウェーデンと言う国が一つの公園であると表現した事も著書を読んですごく合点がいきますよね。先祖から受け継いだものを美化して後世へ渡すこと。
で、例を挙げればキリが無いのですが、それらの維持管理等々を一人の力では当然限界があるので、税金というかたちで皆で出し合って行うので、そういう高負担な数字を受け入れられる素地があるんですね。
もちろん、自分達の先祖に一番近い高齢者の福祉問題や、後世の主役である育児・教育問題等々でも税金という形で皆で養うことも当然のことと言うわけです。
でも、若い人たちはそんな税金ばかり持っていかれるのは嫌だからどっか他の国へ行く!なんて人も当然出てくるだろうとられるんですが、それが違うんですよ。
「99年に行われた国際比較調査で、各国の若者が自国の社会に満足しているかどうかの意識調査が行われ、満足していると、もっとも高かった国がスウェーデンで69%!低い部類にロシア、韓国とともに日本も含まれ、その数字35%・・・・」
と、これまた日本の倍の数字なんですね。コレには私もびっくりしました。なんて大人なんだ!と。それにはスウェーデンの場合、18歳から選挙権はあるし、高校を卒業すれば親元から離れ、独立して生計を立てるのが習慣になってることからも日本とははっきりと違いますね。そんなDNAが脈々と受け継がれているから、住宅設計においても、同じ寸法を各メーカーが作り、良質で長持ちする商品を作り、住まい手はメンテをして、後世へ美化して残す。作り手も、買い手もそんな思想がなければRefuse(拒絶)されるんですね。
2001年に載せた、400年前のログハウスに今でも人が住んでいることも何ら不思議なことでなく、世界一長命住宅である理由もこういうことだったんだなーと改めて感心した次第でございます。そんな国民が、一人だけ自己主張した建物を建てるはずもなく又、建てられないようになっています。
「スウェーデン大使館を現在地に移す為に、その地のコミューン(町・村)に対して外観を変えずに、地域に必ず順応させるという契約を交わしてやっと実現した」、勝手な真似はまかり通らない訳なんですね。
で、我々は勿論スウェーデン人ではないので、全てが真似は出来るはずもないのですが、理に適っていることはドシドシ真似てやはり日本人として、後世へ美化して残すことをもっともっと真剣に考え、自分達の世代だけを考えるのでなく、日本人、ひいては地球人の為に美化して残すことを考えないといけないんだなーと思います。
今、仕事の中で出来ることはゴミを作らない、出さないことがすぐに出来ることだと思いますし、前に書いたエコロジーについてもう一度考えるでエネルギーロスの少ない、自然素材・100年住宅を作り続けることが、一番の美化して残すことに繋がると思うんですね。 と、少しズレ気味にお送り致しましたがいかがでしたでしょうか?
今、色んなところで企業のコンプライアンス(法令順守)、CSR(社会的責任)が叫ばれています。牛肉や牛乳の偽装問題、ディーゼル車の不当表示、保険の違法契約・・・ナドナドこんなのは論外ですが、これからは短命住宅や、製造時における環境負荷商品等も企業の大小問わず、問われてくるだろうと思います。
ハウスメーカーやローコストビルダーはそうなると一発退場!になってくるでしょうし、地場工務店でもそういう面を無視すると退場を余儀なくさせられるんだろうと思います。喰う為には社会的責任を果たさないと喰えないという世の中になってくるんだろうと思います・・・なーんて少し“美化”し過ぎました!?(^_^;)でも、このことは間違ってはいないんだろーなーと思う今日この頃でした。
●参考教科書・・・藤井威氏「スウェーデンスペシャル高福祉高負担政策の背景と現状」