もう一度エコロジーについて考えてみました。DEC.2003

メックレンブルク・フォアボメルン州の大型ウィンドパーク
メックレンブルク・フォアボメルン州の大型ウィンドパーク

「エコロジー」この言葉が乱用されて久しい今日この頃ですが、「健康住宅」同様「イミ分かってんの!?!」と問いたくなるような標榜者が多いように思えます。ハウスメーカーしかり、大手建材メーカー、パワービルダー・・・etc

皆さん「地球に優しい」とか「人に優しい」とか言っちゃってますが、ナンノナンノ!本当にゴミばかり大量に作っては高額にユーザーに売りつけ、廃棄に又お金を掛けさせる・・・ 今回のバイブルは洋泉社出版のフランツ・アルト氏著、村上敦氏訳の「エコロジーだけが経済を救う」(本文中赤字)で記載)新評論社出版の飯田哲也氏著「北欧のエネルギーデモクラシー」を教科書(本文中緑)として、住宅産業に生きる我々のこれからの使命を少し考えてみたいと思います。

ドイツ人のアルト氏はのっけから18世紀の文学者である前に、自然科学者であるゲーテがニュートンを批判した有名なセリフ「木から落ちるリンゴを、物体、落下、速度といった概念で説明しようとする時、抽象的な物理学の公式と引き換えに、自然の生命・自然の質が失われる」と引用しています。

又、ゴア元アメリカ副大統領をして、「これまでの有効なルールは、GMによいことがアメリカによいことだ、というものだった。しかしただちに、環境によいことがアメリカによいことなのだ、というルールを有効にしなければならない」と。又、ドイツ今日の大都市の中心部での平均速度がキロに据え置かれていることで、交通システムは成り立っているのである。 今から年前の馬車の平均速度は17.2キロだった等等奥深い話が列挙されてます。

ゲーテは世界的な発明をしたと同時に自然の、たとえリンゴ1個でも犠牲が出た。近代化は同時に自然破壊化につながると言いたいのであろうと思います。そりゃーニュートンが素晴らしい発明をした事は当然賞賛に値される事は誰でも認める事なのですが、エコロジーを軸におくと今後はこういったセリフも根底に人々が捉えておかなくてはいけないのだろうと。

バーデン。ヴュルテムベルク州ブロイリン市郊外酪農家の天然ガスコジェネプラント
バーデン。ヴュルテムベルク州ブロイリン市郊外酪農家の天然ガスコジェネプラント

さて、そんな中、ドイツ人の最大関心事は80%が失業問題、それと並んで同数の80%が環境破壊だと答えています。アルト氏はこの2大問題を一気に解決する事が出来る方法は、唯一エコロジー問題を真剣に考える事しか無い!と言っています。

ドイツ風力発電メーカーである「エネルコン社」は1987年設立し、800人の社員数が今や倍弱の伸びをみせた。理由はニーズが莫大にあったから。と幼稚園児でもわかる答えですネ。何故ニーズがあったのか!?これですよネ。

内部
内部

ご存知の通り、1986年チェルノブイリ原発事故より以前の1985年にデンマークは、原発製造放棄、スウェーデンでは1980年12基ある原発を、2010年までに全て閉鎖する議会決定が下り、1999年にはバルセベック原発1号機が閉鎖されたり、もちろんドイツも何年か記憶にありませんがグリーンパーティーが原発廃止決定したり、

石油等の化石燃料の枯渇問題、地球温暖化現象、・・・「1ユーロで購入できる1Lのガソリンで1万Lの空気を汚染する」といわれるように、時代は自然エネルギーに完全に向かっていて、ソーラーや風力、バイオマスが「もてる」のは当たり前の事なんですネ。

自然エネルギーに完全に向かっていて、ソーラーや風力、バイオマスが「もてる」のは当たり前の事なんですネ。物が売れるから物を作る為に人が必要。だからエコロジーだけが経済を救うんだ!と ま、ここでまとめてしまえば終わってしまうので・・・更にこんな興味深いデータもあります。

・風力・水力・太陽光・バイオマスの4つの自然エネルギー源の持つ潜在能力は世界の人口60億が必要とする数倍のエネルギー消費量を充分に満たす事が出来る。

・太陽光エネルギーだけで現在全エネルギー消費量の15,000倍      

・風力は35倍バイオマスは10倍

・水力は今日世界中の消費量の約半分を供給できる

水力は今日世界中の消費量の約半分を供給できると、そんな現状報告のなかで自国ドイツより日本のほうが太陽光発電政策に真剣に取り組んでいると褒めてくれています。

ドイツ赤と緑の連立政権がやっとの事で4年も前に日本では助成を行っており1年でドイツが過去2年間に設置した分より多くの太陽光パネルが設置された。しかも、日本ではパネルを設置しても「元」はすぐにとれないにもかかわらずだ!と私は著者に日本のこの不思議な現象の内情をこっそり教えてあげたくなりましたよホント。

この理由はネ、ハウスメーカー達が自社住宅に差別化出来ないもんだから、オール電化住宅という設備機器に頼りきった住宅の販売戦略の為に、太陽光パネルをダシに使っただけなんだヨ」と・・・あ、言ってもーた!ま、これは読んでないか気密・断熱も取れてないスカスカの新建材住宅に太陽光乗っけても、穴の空いたバケツに水を入れるようなもんでしょ。

某ハウスメーカーは「ゼロエネルギー住宅」なんてすごい事言ってますけど、ドイツ人がみたら、その針小棒大さに飽きれるでしょうね。 

デンマークには風力で出遅れたと、初の洋上風力発電パークも出来、陸の40%も多いエネルギー収穫が可能になり、20年後にはデンマークの総消費の半分が風力になる予定だと。フランスは70基も原発があるんですって。同じヨーロッパでもかなり温度差がありますよネ。 

こんなデータもあります「現在休耕しているドイツ中の土地に中国葦を植えると、ドイツにある全ての原発と同量のエネルギー提供が可能だと連邦農水省は、葦に森林の10倍のスピードで成長するバイオマスのソースとして期待している。
更にローカルアジェンダ21で採択された気象保護目標を、スウェーデン自治体は96年時点で90%実行に移していて、ドイツでは15%イギリス・オランダ・デンマークでは40%」

・・・あれ?日本はアジェンダ21って何?ハウスメーカーさん達この言葉知ってるんですかね・・・。

スウェーデン国民の40%が知っていて、20%は資料も目にし、3%は直接活動に参加しているそんなスウェーデンのお話もチョット・・・同国エコロジーの裏には必ず「SNF(スウェーデン自然保護協会)」があり、ここは設立が1909年というから日本は日露戦争が終わり正に帝国主義まっしぐらの時にもうここでは・・・。現在約16万人の会員を有すNGOで、1987年から洗剤や紙製品を手始めに「エコラベル」のライセンス供給を始めました。13分野で計1600もの製品に「エコラベル」を供給しているというから、すごい影響力があるのでドイツの「エコテスト」同様メーカーとしてはこのマークが死活問題になってくるんでしょうネ因みに当社輸入アイテムが「エコラベル」取得しているかどうか・・・は今度聞いておきます。

同州オーバーリード村観光と農村の両立
同州オーバーリード村観光と農村の両立

そのエコラベルが「旅客交通エコラベル」ライセンスを<SJ(スウェーデン国鉄)に与えました。中身は「グリーン電力」つまり、自然エネルギーを使用した風力発電電車に対して、なんと自国国鉄までに、その影響力を及ぼしているんです。

その背景には96年にスタートした電力自由化があり、電力会社を消費者は自由選択出来る事は当然で、ここでは何と!若干の追加料金を払えば、風力・バイオマス・水力・原子力の中から好きなエネルギーを選択出来るんです。一番安い原子力を選ぶ人は少なく一番人気は風力なのだそうです。

更に「電力プール市場」という電気を通貨や株式同様に扱うマーケットもあるんです。国が違えばこうも違うのかと・・・。

スウェーデンより小さい日本で東京に住んでいて九州電力が良いのでそこから電気を買うというようなウルトラCなんぞは夢の又、夢なんでしょうか?日本の電力自由化って何!?東京電力のライバルは東京ガスなんですネ。なんか半分社会主義みたいなスウェーデンに、一度資本主義とは何か教えてもらって来い!って感じですよね。この電力自由化のスキームはかなり興味深いのですがここでは割愛させて頂きます。

 

そんな真の自由競争化にあるので電力会社も需要獲得に必死なわけで、例えば日本でもお馴染み「IKEA」は「ルンド・エネルギー社」と全面契約し、IKEAの店舗・工場その他関連施設の電力はすべてルンドから引き、その代わりIKEAカードでルンド社から電気を買えば割引するという特典を付けたり「ストックホルム・エネルギー社」では自社供給する40%の電力がエコラベルだと(98年現在)。

マタマタお馴染みマクドナルドでは店内から全ての使い捨てプラスティック容器を排除して、リサイクルやバイオマス燃料に出来る紙製品に置き換わったりしています。

 

ベクショー市(私も一度行きましたが、その頃はかなりアホでしたので同市がどれだけ素晴らしい市であるか、何の考察も持たずにただ、工場視察に行って帰ってきただけでした。)

では、「化石燃料ゼロ」を96年に宣言し、2010年までにCO2排出を50%削減すると、その為「VEAB社」というエネルギー会社(市が株式を保有し、市議会議員が理事を努めている)のバイオマス燃料を用いた「コジョネレーション」と「地域熱供給」の導入を促進しアパートの90%、戸建ての20%にこのシステム導入達成した。

 

・・どうです!?スウェーデンってすごい国でしょ!って別にこれが言いたくて引用した訳ではないんですが、私自身同国建材を扱う以上誇りを持ってやりたいので誇りの持てる国のものは「やっぱいいな!!」と・・ってこれも言わなくてもいい事なんですヨ。

 

「何の為のエコロジーなのか!」って事です。我々住宅業界の人間はこれからどのように人・社会・地球に貢献していかなくてはならないかと言いますと、先までに挙げたそんなBIGな事業でも何でもなく、後にも先にも「ゴミを作らない!出さないことなんです。よく、環境3R(Recycle再生利用・Reuse再使用・、Reduce抑制)がよく叫ばれていますが、専門家の間では、Refuse拒絶という概念が有り、私はこのRefuseが一番大事だと常々考えております。

 

何故か?といいいますと、「火の無いところには煙は立たない」からなんです。原因があるから結果があることは必然ですよネ。分かりやすく言うと、ゴミを作るから、ゴミが出るんです。新建材や、サイディンク、アルミサッシ等々で固めた家を作るから廃棄等の処分環境負荷がかかるわけですよネ。ダ・カ・ラ皆さんにはそれら商品をまず、自ら住宅つくりの際にRefuseしてもらいたいのです!

これもよく、アルミはRecycleの優等生ダ!なーんて言ってますが、以前にも書いた通り、そのアルミを作るのにイッタイどれだけの電気をジャブジャブ使うんだ!?と言う事です。新建材をRecycleして何かの商品に変える・・・これもしかり、最初から作らなきゃいいんですから。

 

そのRecycle品は絶対世の中に必要なものなんですか? あ゛ースミマセン・・・だんだん乗ってきちゃいました!あと、ペットボトルをRecycleした断熱材。これも、ペットボトルはもっともっと他のそれこそ、フリースといった衣類やその他Recycle用素材としてはモテなんですから、何も断熱材にムリヤリしなくてもいいんです。その断熱材は、羊毛のように内部結露を防止出来ますか?断熱性能がウレタンより優れていますか?世の中に絶対必要ですか?

ダ・カ・ラ環境の4Rの優先順位はまずはRefuse!!そしてその次にゴミを出さないようにするReduce。そして、すぐ捨てないよう長く使うReuseで、それら全部をやり尽くし最後にRecycleが必要なんです。順番をしっかり守って欲しいものです。

 

ですから、皆さんは新建材その他環境負荷の高い商品をした100年住宅を追求して、Reuseを同時に達成していくしかないんですネ。「予算が無い」とか「お客さんがコレで良いって言ってるから」とかそんな理由でホイホイとそれら使い、予算に合わせる事が我らの使命と思っている方々も多いでしょうが、これからはそういう要求をRefuseし、真のお客様の利益と社会貢献を果たす様努めて頂きと、同時に自然の力を最大限に生かすパッシヴなデザインをベースに考えたエネルギーロスの少ない住宅。

 

だから高気密・高断熱は当たり前。真のゼロエネルギーを目指すべく開口部の高性能化(だから木製3層サッシ。それらを充実させて後、資金的に余裕があれば太陽光や風力・バイオマスといった設備導入と。日本のハウスメーカー他多くは100年住宅の思想もない新建材・設計にエネルギー思想もないアルミサッシやグラスウールを多投するくせに、太陽光パネルやその他設備増強をメインにしたがる。これでは誰の為に何の為のエコロジーか分かりませんよネ。

 

アルト氏も「とりあえず建築家や都市計画者はどちらが南向きなのか勉強すべきだ」と言ってます皆さんがRefuseしないで、それらアイテムをジャンンジャン使用した住宅をやればやるほど消費者からRefuseされる時代がもう来ているし、もうされているかもしれません。

ナ・ノ・デもう一度欧州を中心とした国々の実際行われている現状を見て、日本の稚拙なエコロジー住宅を反省し、我々の使命をじっくり考えてみてはどうか・・・と。愛知万博では、北欧5カ国が共同で上述したエコロジー関連のパビリオンを出すと言うことですので下手な日本だけの環境展より絶対おもしろいと思いますよ。

 

ふーーーー何とかまとまりました。さて、いよいよネタ切れです。今度は本当にスウェーデンに行って来ますよ。今度こそもっと色んな角度(素材・まち・環境etc)から見て来ますから資金援助の「愛の注文」お待ちしております!

 

当サイト写真;提供者同著訳者村上敦さん

 

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